第10話



札幌ベース



 早朝に起床。ただし、就寝した時刻が異様に早かったため、とてもさっぱりした気分だ。

 また、17階から見た朝の札幌市内の眺望も秀逸の一言に尽きる。

 さっそく3階の温泉施設で、ひとっ風呂浴びた。朝湯も堪えられない。いやあ、すっかりホテル泊にハマってしまってしまった。なんと快適な旅なのだろう。

 夏に来れたらさあ、全部、温泉宿泊の北海道ツーリングにしちゃおうかしらん?

 こらっ!

 もとい、キャンプばかりではなく、ぼくも歳なんだから、何日かに1回ぐらいずつ、温泉宿で疲れをとるのも悪くはないやも知れません。

 インターネットを駆使すると、驚くべき低料金プランが発掘できる事実も知ったし。

 でも、夏はやっぱり、キャンプ旅と源泉露天風呂にできるだけこだわりますね。こんなにポンコツになった北のサムライでも体が効くうちはさ。

 シリエトクのキタノの矜持は、まだまだ冷めてはいないつもりだ。

 そんなことより飯だ。

 朝食は、いくつか種類があるらしい。バイキング、ヘルシー和食膳・・・

 ヘルシー和食にしよう。オジンなんで、もうバイキングは辛いぜよ。というわけで、さっぱりとして美味しい五穀米の朝食を済ませた。

 それと、荷物を担いで歩いているスタイルなので、道内最終日の本日は、余計なものは、全部宅配で送ってしまおう。衣類を中心に不要なものは段ボール詰め、朝だけ常駐の業者のお姉さんにお願いした。

 身を軽くして、札幌市内を闊歩した。

 ひとつだけやりのこしたことがあったぜよ。

 この旅で、まだ札幌スイーツを食べてなかった。長年、行こうとしていたのだが、男一人で入るのが、こっ恥ずかしくてなかなか入れなかった。

 それは・・・

 札幌パフェの堂々たる老舗の”雪印パーラー”である。

 目の前まで来ていたのだが、入れずにうろうろしている不審な男がいた。

 ええい、ままよ!

 清水の舞台から飛び降りるつもりで入りました。もう顔真っ赤です!
   おっかなびっくりでオーダーしたのは、”生キャラメルいちごみるくパフェ”だ。

 1260円也。たどたどしくスプーンを動かして食べたけど、本当に美味しかった。

 10分ぐらいで完食。ご馳走様でした。
 近くに旧道庁があったので、ついでに撮影し、札幌駅に戻った。

 今回、札幌に4泊した。ひとつのアクションごとに札幌から始まり、札幌で終わるという計画を立てた。

 つまり、

 札幌ベース・・・
 
 というシナリオだ。ぞんがい用意周到なプランである。練りに練った。ただ、2009年の北海道ツーリングのように直前にハプニングがあり、キャンセルした苦い体験もあったので、計画を進めながら、いつでもキャンセルできる哀しい態勢もとっていた。でもまあ、年末年始休日と祝日の間に休日出勤の振替2日を加えて休みを繋げただけなので、よほどの緊急事態がない限り、ドタキャンはないと見ていた。

 終わりよければすべてよし。そして首尾よく事が運び、思い残すことなく、苫小牧行の普通列車に乗り込んだ。しかし、筆者はこの時点で油断していた。家に無事にたどり着くまでが旅という敬虔な大原則を失念しているとを(真相は次項にて)

 途中の原野の光景が、北海道らしく荒涼としていて素晴らしいと飽くことなく眺めているうちに苫小牧駅に到着する。
   まだ時間があるので、苫小牧の市街地を散策する。正月2日のせいか、繁華街に人影は
ほとんどなかった。

 船に乗る前に夕食をとりたいのだが、正月休みのせいか開いている店もない。なんだかアセッてしまうぐらい閑散としていた。
 ようやく1軒だけやっていた”ルムビニカリーカフェ”というインドカレーのお店を発見する。

 なにやら熟練のネパール人シェフが調理しているそうだ。ちなみにウエイターもあちらの国の方だと思う。 
 辛さは5段階まで指定でき、ぼくは4辛のスープカリーにしてみた。やがて運ばてきた香ばしいカリーを一口頬張ると、口の中にスパイシーな旨味が絶妙に広がった。非常に美味しい。出来立ての大きなナンもモチモチして文句なしの旨さである。

 帰宅後、ネットで調べたら、根強い人気のある店であることが判明した。また是非再訪し
たい。次はチキンチーズカリーを5辛で食べたいと密かに思うなり。

 腹もつくったので、フェリーターミナルに向かうか。

 混雑する北海道中央バスに乗り込んだ。車中は、百戦錬磨の北の旅人っぽい人が実は多かったりした。車やバイクなしのフェリーだけの船旅が格安ということを皆さんご存じなのだろう。 
   待合室も大変混み合っていた。それでも空いている席を確保し、缶ビールの栓を切って流しこんだ。喉が渇いていたので、とても美味しく感じた。

 やがて、乗船の案内放送があり、タラップを歩く。フェリーでタラップを歩くのは、ぼくの場合、冬の旅だけである。それにしてもとてつもなく長い通路のように感じられた。 
 出航の銅鑼がなる頃、片手に缶ビールを持ちながら、ぼくは、ようやく本を読んでいた。

 太平洋に向かって輝いていた苫小牧の街の灯が、いっせいに動き出す。

 そんじゃあ、ぼくは、ほんの少しばっかし、本州にいってきますわ!



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