第17章 日勝キャンプオフ



日勝キャンプオフにて   


   目指せ日勝峠



また納豆定食
 早朝に目覚める。雨はなんとか降ってないが、どんよりとした低い雲だ。さっそく露天風呂へ行き体を温めた。すっかり世話になったこの露天風呂とも今年はお別れだ。名残りを惜しみながら湯からあがった。

 そして、いつもの朝食「納豆定食」だ。3パックぶち込んだので、凄いボリュームだ。しかし、さすがに納豆には飽きた。
 食べ終わる頃、ようやくAOさんが起きて驚いている。
「なんでこんなに早いの?」
『今日は日勝キャンプ場で永久ライダーオフだからですよ』
 と俺が応えるとAOさんも慌てて朝食の準備。しかし、AOさん朝から○○ですか?画像を撮ろうとするも取材拒否(笑)
 テントもたたんでパッキングも抜かりなく済ませた。

 マシンを暖機させているとオーナーのおじさんが通りかかったので世話になった挨拶を済ませた。あと俺を自衛官だと勘違いするのはもうやめてね。俺は俳優なんだから?

 そして、ゆっくりとスロットルをあげた。北のサムライをして「道東のベース基地」とまで言わしめた和琴キャンプ場、また来年必ず帰ってくるからな。ありがとう。
 やがて阿寒横断道路へ突入。霧が多い。それよりも追い越し禁止路線でトロトロ走る車の後ろについてしまい最悪の走りとなる。

 しょうがないので、キョロキョロと見える範囲の風景を楽しんでいるとパーキングに・・・

 ギョッ!装甲車だ。スゲー・・・ 

やっぱり自衛官じゃないですか?

大阪屋食堂
 思わずウィンカーをあげて近くにマシンを停めた。

 AOさんが自衛官の方へいろいろと質問していた。どうやら皆さん休憩中らしい。そしてこの装甲車は沢登りも可能だとか。ついでに画像を1枚撮らせてもらった。でも、くれぐれも俺は自衛官ではない。ノンフィクションの作家だ?
 
 霧の中をひた走り、オンネトー付近を通過した。雨は降ったり止んだりと忙しい。ドライブイン「くまげら」手前のパーキングでもトイレ・一服休憩。煙草を吸っていると団体ライダーの一人が出がけにド派手にタチゴケを決めていた。どうやら怪我はないようだ。俺はこの旅タチゴケゼロ。珍しい。

 
そして足寄の街の中へ入った。少し早いが大阪屋食堂で昼食をとるつもりだ。

 実は大阪屋、道路拡張工事のために今年で閉店になるという情報があった。俺の思い出の場所が次々と北の大地から消えていくことはとても辛いことだ。
 17年前、初めて北海道ツーリングをした時も入ったし、昨年も味噌ジンギスカンを食べた思い入れのある食堂だ。閉店するなら挨拶と喰い納めにと思い立ち寄ってみたのだが。

 まだ時間的に早いためか客は俺ら以外誰も居ない。アルバイトらしき若い男に味噌ジンギスカンをオーダーした。

 やがておじさんがジンギスカンを運んで来て、テーブルで自ら炒めてくれた。

人気の味噌ジンギスカン

大阪屋食堂のおじさん
 俺は始めから核心に触れる質問をしてみた。
『この食堂が閉店になると聞いたので今年も来てみたんですが』
 おじさんは怪訝そうな顔をしながら箸を動かし
「なんも俺が生きてる限り店は閉めないよ」
『じゃあ、噂はガセなんですね』
「役所は、今年こそはと何度も言っているが、毎年なんの動きもないよ。まったく国のやることは」
 とこぼしていたが、どうやら店は存続するようなので大阪屋ファンの方、ご安心ください。
 ジンギスカンが焼きあがった頃、お客が続々と入店してきて活況を呈し始めた。おばさんも出てきて忙しそうにクルクルと立ち働いている。おばさんにも挨拶しようと思ったが邪魔になると悪いのでやめた。来年以降も店は続投するようだし。

 AOさんと味噌ジンギスカンをつつきながら、ご飯をもりもりと食べた。美味い。まさしく俺にとっての青春の味だ。思えば遠い時間まで来たもんだ。

出来上がったジンギスカン
 会計を済ませ、静かに店を出た。俺は近年、ヌシが嫌いなことと心に期すことがあり、ライハは泊まらないようにしている。

 ちなみに食事をするとタダで泊めていただけるサービスは継続中だが、こういうサービスを始めからアテにする(勝手だが)連中には俺は何か違うものを感じるし、そこに真の旅の説得力が見えない。

 打算が出来ない俺は、金を払ってでも苦労するタイプなのだ。でも、そういうコダワリがあるからこそ「北のサムライ」という異名が成立できたのかも知れない。

 またまた雨の中をひた走る。そして、ようやく十勝エリアへ突入。上士幌、士幌を駆け抜ける頃、どうにも眠くてコンビニへ入った。終始北野ペースに合わせてもらってすいませんねえ、AOさん。「永久ライダー」の熱心な読者でもあり、しかも俺よりずっと年上で地元の方なのに、なにかと不肖永久ライダーを立ててもらって本当に感謝に耐えません。

 缶コーヒーを飲んで、しばし鋭気を養う。もう少しで、日勝峠だ。あと一息!

 鹿追町付近では、苦労してショートカットしながら時間短縮を図った。途中、自衛隊のトラックが畑に横転している凄まじい光景を目撃。居眠り運転かな?確かにこのルートは眠くなると思う。風景が単調だし、小雨で気持ちが冴えなくなるしで。でも運転してた人、上官からかなり怒られているだろうなあ・・・なんて考えながら、ボーっとアクセルを握っていた。

 そして、ようやく清水の街を抜け、清水町パーキングで小休止。日勝キャンプ場まで、ほんの少しだ。なんだか和琴からここまで、凄い距離があったような気がする。かなりバテバテ、もう夕刻も近い。カップルライダー2組にさんざん見せつけられながら一服。ここからの眺望もたいしたもんだ。天気がよければ本当に感動もんだと思う。

 よし、今日ラストの走りだ!

 日勝キャンプ場は、日勝パーキングから入れると思ったが、日勝スキー場の方から入るのね。思いきり間違える。またもAOさんに先導してもらってスキー場方向へ右折。最初は舗装でよかったんだけどキツイ下りの荒れたダートだ。ひえ〜と叫びながら降りると途中に管理事務所。どうやら森林組合の管轄らしい。

 また事務所の管理人のおっさんの対応も遅い。キャンプの代表者の名前ひとり「北野一機」と書けばよいのにAOさんまで書けと言われる。AOさんがムッとして、こういう場合は代表者1名が書いて他何名と書くのが常識ですよと言ったのでようやく開放される。利用料650円、しかもゴミ持ち帰り。なんだかなあ・・・

 とにかく、ダートをさらに下ってサイトを入念にチェックした。一番下の渓流近くのテントサイトなら夜遅くまで宴が盛り上がっても他のキャンパーには沢の音で迷惑にはなるまいと判断し、テント設営を開始した。

 そして、いよいよ伝説のキャンプオフの秘密のベールは剥がされて行くのだ。

 まさに現在の『EOC』の原点となるMTである。

 くれぐれもエロ・オヤジ・キャンプの略ではありません。

 時は今(2003.8.14)、日常の仕事や家庭など、もろもろのしがらみや苦労はすれど、北海道キャンプツーリングにて最大限に旅を昇華している普通の社会人・リーマン諸氏が、無敵の野営旅人軍団として立ち上がった。

 日常をきちんとこなしてこそ結実する正統派自力型ライダーの祭典だ。

 アンチも居るらしいが、俺は世の中にひとつぐらい、こういう世界が在ってもよいと思う。

 北海道ツーリング、いや旅人界に戦慄と衝撃の旋風を呼ぶEOC(永久ライダー・オフ・キャンプ)、その凄まじい1ページが、ここから幕をあける。


日勝キャンプオフ



日勝キャンプ場にて(撮影:AO氏)



kenさん
 テントの設営が完了する頃、kenさん登場。本当に約束を守ってくれたんですね。なんと誠実な人柄なのだろう。kenさんもテントを立て始め、完了する頃、音更のAKIYAさんも現れた。スゲー!
 音更町の住人AKIYAさん。ネット上でしか交流がなかったのだが、俺は既に好青年と看破していた。まさに北野お気に入りの若者なのだ(注:モーホーではなく)。

 若者らしくスラっとした体型で、とにかく真面目な人柄だ。礼儀正しいし。なんとなく「北の国から」の正義感が強いキャスト「正吉」を彷彿させる青年だ。

AKIYAさん
 そして、あらけんさんとヨウコさんもナイタイ牧場へのツーリング帰りということで立ち寄っていただいた。

Y2さん(後姿で申し訳ない)
 残念ながらあらけんさんは、明日出勤ということで、飲まずに帰られるとのこと。次回は是非、オフへフル参加されてください。待ってます。

 とりあえず、買出しにAOさん、kenさん、北野の3人で出かけた。途中、ラッシャーともすれ違う。来てくれたんだ。ありがとう!とにかくオフキャンプは、一番下のサイトだと言い残し、キャンプ場を出た。 
 日勝のローソンはキャンプ場のゴミ問題で、かなりキャンパーを敵視しているらしく(キャンプ場へ言えばよいのに)キャンプできる品揃えなどほとんどない。やむなく酒や簡単なつまみだけを購入した。

 kenさんご芳志ありがとうございました。オフ会はほとんどAOさんと俺のポケットマネーだけが財源なもんで助かりました。

 そして、清水町のスパーまでAOさんと走り、不足している物資(大量のジンギスカン等)を調達して、ようやくキャンプ場へ戻る。

 どうにか乾杯タイムとなる。なんだか猛烈に汗をかいたのでビールが美味い。
 kenさんは、昨日、ライハを利用し惨々な目に遭ったそうだ。12時消灯のはずの根室の某ライダーハウス。以前は俺も懇意にしていた。ところが安眠室(早出する人のための部屋)でまで馬鹿騒ぎがあったらしい。やっぱりキャンプ場が一番だそうだ。

 そんな話をしているうちにカタナ好きな広島のY2さんも登場した。さっそく宴に交じる。また皆で実に真面目な自己紹介もした。今回はオフで初対面の方が多いんで、やっておいてよかったと思う。

 快速旅団、団長氏
 そして、宴も盛り上がってきた頃、ハレーの排気音、快速旅団の団長氏も大取りで登場!お忙しいところ参加いただいて本当に申し訳ない。

 さあ、ここからが宴の本番だ。雨がぱらついているが気にせず酒を注ぐ。AOさんの炭焼きコンロ、またまたフル稼働。ジンギスカンをガンガン焼いて、酒はジャブジャブと煽りまくる。AKIYAさんのお土産、西帯広の「有楽町」のジンギスカンがかなり美味かった。野郎ばっかで山の中のキャンプ場の大宴会。シチュエーション的に梁山泊の世界へ突入せり。

 とにかく皆楽しそうだ。大人気のカブ90オーナーのラッシャーもガンガン喰っている。そして、既に義兄弟の杯を与えた酒の弱い弟分ラッシャーへ、男なら酒も飲めと無理矢理焼酎を注ぐヨッパライダー北野の姿もあり。そして笑いっぱなし。

 この後、とんでもない事態が!

 次章をお楽しみに(爆)