北海道ツーリング2014











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最終章



 毎度毎度の二日酔いで寝坊した北海道ツーリング最終日の朝でござんした。

 朝食は無理に作らずに珈琲だけにとどめよう。なぜなら、苫小牧港のマルトマ食堂でブランチにする予定である。なんて思いながらコーヒーを啜っていると、テントにあたる雨音が響いていた。

 おのれえ〜、最後の最後まで雨かい?その後、暫くふて寝したけど、雨はやまず。

 致し方なく、雨の中、テントの撤収作業を終え、苫小牧方面へと向かった。

 時間的にこれぐらい早ければ近年混んでてまったく入れない、苫小牧の市場食堂”マルトマ食堂”を利用できるだろう。

 小雨の中、マルトマ食堂に辿りつくと珍しく並ばずに席につけた。

 オーダーしたのは、本日のサービスメニューの”イカウニ丼”である。

 歯触りのよい新鮮なイカと風味豊かなウニの香が実によく絡んだ美味しい丼だけれど、てんこ盛りのもの凄いボリュームで、ご飯を少し残してしまった。失礼!

 その後、近くの格安お土産屋さん(サンロード)にて、富良野メロンを数玉自宅へ送る手続きをした。

 もう若くもないというか、ロートルサラリーマンがこれだけロングな休みをとって手ぶらで帰還するわけにもいくまい。

 しかし、雨は降りやむ気配すらなく”銀の雨”状態が続いている。
   最終日だけど、雨の中、無理に走りまわらなくてもいいだろう。

 TMを見ると苫小牧市内に温泉があるではないか。そちらで、じっくりと疲れを癒すのも悪くない。

 天然温泉しらかば温泉湯(苫小牧市しらかば) 泉質:ナトリウムー塩化物泉 利用料600円
 雨の中、ナビを頼りにマシンを走らせると市街地というか住宅地の中のビルの2階にしらかばの温泉湯は存在した。しかも1階はパチンコ屋だった。

 この外観は天然温泉というより、スーパー銭湯といった方が適切である。

 ところが、内部は和風の樽前の湯、洋風のウトナイの湯を始め、11種類のお風呂が充実していた。雨の露天風呂もいい雰囲気である。
 広々として、のんびりとくつろぎながら温泉を楽しむことができた。こんな温泉が筆者の地元の市街地にあったら、かなり通う、いや常連になると思う。

 大詰めとなった甲子園大会を見ながら、ふにゃふにゃになるまで筆者は茹であがっていた。
 
 
 そろそろ、フェリーターミナルに向かうかと風呂からあがったのだが、窓の外は相変わず、”銀の雨の中♪”でござんした。
   しらかば温泉湯から苫小牧フェリーターミナルまでは、そう遠くはなかった。

 ただし、全身にシャワーのような横なぐりの雨を浴びまくる。

 太平洋フェリーは意外に乗船するツーリングライダーが多かった。
 (画像に写っている後ろ姿の人は、ぼくではありません)。今宵のフェリーは”きたかみ”であった。もちろん、寝台の1階になるように手配をした。

 筆者は、寝像がハンパなく悪くて、2段ベットの片隅から落ちた経験が遭った。
 
 人からあまり信じてもらえないけれど、実は講道館柔道三段だったりする筆者は、とっさに受身をとり、奇跡的に無傷でした。まあ、昔の話でござんす。

 しかし暇だ。時間はまだまだあるので、売店とかふらふら覗いて時間を潰した。

 あたりが薄暗くなった頃、ようやく、オートバイの誘導が始まり、”きたかみ”へ乗船した。ついに今年の北海道ツーリングも終わっちまったと感慨無量である。

 入浴後、窓から外を見ると雨の苫小牧の街の灯りがどんどん遠ざかっていく。
   夕食は、船内のレストランの夕食バイキングで摂った。

 焼きたてのステーキが美味い。その他、充実のメニューである。

 2,000円かかるけれど、絶対に元は取れる。
 
 お寿司ももちろん食べ放題である。

 ソフトドリンク系は無料でノミホだけれど、アルコール類は有料だ。

 それでも居酒屋へ行ったと思えば安いものだ。
 
   太平洋フェリーオリジナルのワインだ。香ばしくてとても飲みやすい。値段もリーズナブルなので、お土産にもいいと思った。

 ビールやワインをガンガン飲んで、美味しい料理をしこたま食べたら、眠たくなってしまう。
 というわけで、上機嫌でヨッパになった筆者は、B寝台に戻り、あっという間に爆睡してしまったようでござんした。

 なんだか、最後の最後まで緊張感というやつに欠けるキタノさんである。
 早めに起床し、朝風呂へと向かった。

 浴場の大きな窓から外を眺めると空と海の色が朝から暗い。そして雨が降っている。どうやら、このツーリングの最後の走りも雨の中を駆け抜けるしかなそうだ。

 まさに雨に始まり、雨によって終わる。どんだけ筆者は雨男なんじゃい!
 
 風呂の後は、朝食バイキングだ。フェリーの中での筆者の行動はワンパターンである。ただ、若いころと違い、朝からガンガンは食べれないのでほどほどに済ませた。少し、二日酔い気味のせいか、味噌汁がとても美味しく感じる。朝食の量が控えめのわりに好物のメロンソーダやアイスコーヒーは、がぶがぶと飲んだ。

 寝台に戻り、横になって朝食の消化活動に努めていると下船の案内放送が入った。数限りなくフェリーの乗船下船を繰り返しているうちに荷物の撤収作業が異様に早くなったと思う。というより、風呂からあがった段階で既に準備ができていた。

 車両甲板へ向かうエレベーター前には長蛇の列ができている。これは階段で降りた方が賢明だ。山行用のザックを背負い、手にはタンクバックを持って階段手前まで来た。

 すると、エレベーター前の行列に割り込もうとした老夫妻が係員から注意され、ジイサンの方が逆ギレしていた。昔は人生のお手本であったはずの年配者に何かが起き始めつつある。

 全部とはいわないけど、身勝手というか傲慢な老人旅行者が、近年とても目立つ。道東のあるライダーハウスで、若者にやたら説教するなど高齢者ライダーのヌシ行為が問題になったらしい。その施設では、年齢制限を設け、中高年ライダーの利用を禁止したら、若者や女性パッカーの利用が激増したそうな。

 しかし、それ以前に年配のライダーが無料や低料金のライダーハウスを大威張で利用するのも大人げないと思う。原点回帰して、経済的に大変な若者に譲ってやればいいのに。

 後方から老人の怒鳴り声が聞こえてきたが、かまわずにEデッキまで一気に降りた。厄介な老人に絡まれた係の人も大変だろう。ちなみに車両甲板に降りれるのはドライバーのみ、夫婦では降りれないということも付記しておく。 
   荷物をパッキングしているとちょうど作業員の人がまわってきて、固定されているベルトを外してくれた。

 でもここからがぞんがい長いのだ。バイクは端っこに停めてあるから、四輪が出てからじゃないと動きがまったくとれない。そして、排ガスが充満していてとても煙い。ようやく係員の指示が出て、仙台港へ上陸・・・







 雨はどうにか降ってない。なんとか小康状態だけど、周囲が夕方のように暗かった。

 長居は無用だ。ゼファーのスロットルをあげ、仙台東部道路に乗り、南部道路に乗り継ぎ、一気に東北道に出るとほとんど土砂降りとなった。体に当たる雨粒が痛い。

 まるで水上バイクのように水しぶきをあげながら宮城福島県境を突破する。真っ白だ。ガスで、フルーツ王国・福島盆地はまったく見えなかった。

 一応、雨具は着ているけど水分が沁みてきて中の服までびしょ濡れになった。こんな目に遭うのは若い頃から幾度も経験していることなんで、たいしたことはないのだが、体が冷えたし、朝食は抑えめにしたので小腹が空いた。帰宅する前にラーメンでも食べてゆくか。某SAのラーメン屋のわりに近年食べログなどで好評なお店があった。そこにしよう。
 店は混んでいたが、カウンターに座れた。オーダーしたのは普通の醤油ラーメンである。

 味はあっさりの会津系かな。まあまあ美味しいが、特筆すべきことはない。ただ間違いなく、全身がポカポカと温まったことを奇貨とすべし。
 
 東北道を降りた。間もなく拙宅に到着する。そしてついにこの夏の北の旅も終わりだ。

 これを書いている今現在、非常に疑問に感じることあり。今シーズンに果たして夏は存在したのだろうか?

 そう思うぐらい天気が悪かった。

 激しい風雨を浴びながら、筆者は一言叫んだ!

 太陽にあいタイヨウ〜



                     <終わりに>

 長々と駄文におつき合いいただいた皆様、ご覧いただきありがとうございました。

 8月の終り頃から12月の後半まで、ブログで長期間だらだらと連載した記事をそれなりに校正しながら、HP本編でまとめました。

 本当にトラブルばかりの珍道中になってしまいましたが、今となってはすべてよき旅の思い出です。またチャンスがあれば北へ向かって旅に出たいと思います。

 それではいつかどこかの旅の空にて!

 ご覧のすべての皆様へ・・・

 いい旅を!



FIN



記事 北野一機

画像提供 ニセコアンビシャス

2015年1月吉日連載完了



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