北のサムライがいく 東北ツーリング2017








庄内夕日の丘キャンプ場にて







終章



旅の終わりも雨だった!



 6時起床、軽く朝食をとってテント撤収開始。外は曇り空だが今日はなにがなんでも動くつもりだ。家人が言っていた天候の安定しているという日本海側に出よう。

 滝の沢峠を越え、R454でショートカットし、R7へ出た。このあたりで小雨にやられたがカッパを着るほどじゃない。大館に入ると薄日が射してきた。どこまでもどこまでもR7を南下していく。

 大潟村に入る頃には、お天気は快晴となってきた。そして暑い。昨日まで寒さに苦しんでいたのに一気に猛暑となった。身体がどうにかなりそうだ。





 由利本荘の『喜怒哀楽』というラーメン専門店で、あっさりラーメンを食べた。かつおだしのその名の通りのあっさり味だった。暑さのせいか、ボーっとしてバイクのカギを忘れて外に出てしまう。すると店内からお姐さんがカギを持って来てくれた。ありがとう。





 お店の前の日陰にバイクを停めたんだけど、この場所から動きたくないなんて思ってしまうくらい暑い。昨日までとのこのギャップが大き過ぎる。まあ、仕方がないのでスロットルをあげて南下開始。

 名前を失念したのだけれども入浴施設が隣接している道の駅があり、早めのお風呂にした。心地よく汗を流したのけれどもその後、休憩室で足裏マッサージ機でブルブルして、横になったら1時間ぐらい爆睡してしまう。





 あまりの暑さで、バテバテで庄内空港付近に到達した。空港に隣接したライダーに人気の『庄内夕日の丘キャンプ場』へ幕営することにした。しかし、本当に大迫力の光景である。

 庄内夕日の丘キャンプ場は、利用料400円。シャワーあり。ゴミは分別して捨てられる。入場して手前(空港側)右手がライダーサイトだ。

 バイクの乗り入れも可である。これだけ好条件が揃えば、また来てしまいたくなるのは必定だと思う。





 さっそくテントやタープ張り作業をしているとライダーさんから声をかけられた。

「バイク、福島市ナンバーなんですね。ぼくも福島なんです」
『あなたも福島市からなんですか』
「いえ、ぼくは福島県郡山市からです」
『それはそれはお疲れさまでした』
 そういうと郡山のライダーは、にっこり笑いながら闇の中に消えていった。

 ビールを飲みながら簡単な食事を済ませる。ラジオを点けると、ラジオ福島の番組がしっかりと聴こえていた。

 秋田市内あたりまで到達できればよし。そんな大雑把な計画だったのだが、つい酒田市まで来てしまう。今日もずいぶん走った。

 北のサムライって、頑張り屋さんなんだからもう!

 もう、ゴールは近い。明日には帰福できるだろうなんて思いながら、シュラフに入った。シュラフの中でもウイスをちびちび舐めながらラジオを聴く。この瞬間、この雰囲気がキャンプしてるなぁって感じがしてとても好きだ。

 庄内は、福島市内へ近いから、旅が終わっても致し方ないところだ。

 それは、ショウナイことだなあ・・・

 あんまり遅くには航空機が離発着してなかったようだが、エンジン音とかまったく気にならず爆睡する。

 あっそうそう、夕刻、ハーレーがレッカー移動されていった。お盆のこの時期に本当に大変なことになり、心からお見舞い申し上げます。災難なことだと思う。昨夏、ぼくもサロベツ原野でゼファーのレギュレーター故障という予測もつかない展開となり、絶望の淵に追い込まれた。なんとか、ハーレー乗りさんのバイクが復調することを心から祈念するばかりである。





 朝、何時ぐらいだろう。筆者が目覚めたのは、そんなに遅くはなかったんだけれども、結構みんな出発が早かったんだ。庄内夕日の丘キャンプ場のライダーサイトはがらがらだった。

 本日も蒸し暑い中、撤収作業を済ませた。朝食は、コンビニのサンドイッチとインスタンドコーヒー程度だ。一昔前は、米を炊いて納豆3パックをおかずにがんがん食べたものだが、もう完全にロートルなオッサンライダーなもんで無理です。

 洗顔もパッキングも済ませ出発。ルートは海沿いのR112にした方がよいと後日気づいたのだけれども、最初だけ、一時内陸のR7へ律儀にしてしまった。ちょっと失敗。それでも由良あたりで海沿いのルートになった。

 鶴岡を抜け、いよいよ新潟県村上市に入る。このあたりを走るのは人生初だと思う。美しい海岸線のルートが続いた。上の画像も村上市の海岸である。もう少し、先に進んで能登半島ぐらいまでいける日数も体力も充分に温存していたのだが、あんまり欲張らず村上から帰途に着こう。何事もほどほどが肝心だ。なんて若い頃から、ずいぶん無理ばっかりしてきた筆者も丸くなったのう。

 村上十文字あたりから一気に内陸に向かう。R113という凄い山の中のルートだ。小国街道というらしく飯豊連峰の麓をひた走る。飯豊連峰って、福島県の会津地方の人間や東日本の登山関係者なら誰でも知っている百名山で万年雪が残る険しい山岳地帯である。

 やがて南陽市に入り、R13にぶつかり米沢方面に出た。このあたりから、またも曇り空になってきた。まあ、もう米沢までくれば旅も終わりだ。旅の無事を祝って、米沢牛のステーキでも食べていくか。

 R13沿いの適当に入ったレストランで、奮発して350gステーキのコースをオーダーしたのだが、これがなまら旨いのなんのって。画像に撮ろうとも思ったのだが、まさかのズームエラー、つまりデジカメ故障で撮影できず。あしからず。

 すっかり満足してR13を東へと向かう。もう間もなく福島市内だ。栗子峠付近で弱い雨にやられた。旅のラストもやっぱり雨か。栗子スキー場あたりでカッパを着て最後の走りだ。

 正直言って、東北より北の大地の方を熟知しているが、東北もずいぶん広い。タイトル通り、東北大陸を存分に体感できた。そしてまだまだ繊細で、見聞すべきものは無尽蔵に蓄積されていることだろう。

 昨年あたりから、ずっと体調を崩していたのだけれど、多少無理をしてでも旅に出てよかったとしみじみと思うなり。

 物語の終わりにこんな雨の日、似合いすぎてる♪

 最後にクロスカブ110、まさにロンツーのためだけに登場したような恐るべきマシンであることをご覧の皆様にお伝えして筆を置くこととする。

 それではいつかどこかの旅の空にて。

 いい旅を!



FIN



記事 北野一機



6泊7日 総走行距離1600キロ



2017年9月吉日全編UP



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EPILOGUE



 この夏、ゼファーではなくクロスカブで旅した筆者を小馬鹿にする輩がいるとか?どんなに排気量が小さくてもバイク乗りならライダーだし、旅に出ればツーリングライダーなのが当然である。

 原二でロンツーに出てなにが悪いのだろうか。大きいバイクに乗れば偉いとでも思っているのか。なんか非常に勘違いしてないか。近年なら、金さえ出せば大型二輪免許など誰でも教習所で取得できる時代である。

 それに都市部以外なら、圧倒的に大排気量のマシンでツーリングした方が楽勝に決まっているもの。原二では高速道路にも乗れないし。

 ぼくは、個人的に過積載の原付でツーリングをしている人を試験場で限定解除した1986年の遥か昔から、密かに凄いと舌を巻いていたし、憧れてさえいた。

 チャリダー、もとい、自転車ツーリングをしている方々など、ほとんど神ってるようにしか見えなかった。

 スーパーカブにスパイクタイヤ履かせて、厳冬期の宗谷岬に向かうライダーなんてたいしたもんじゃないか。そして『水曜どうでしょう』のスーパーカブによる原付シリーズ。あの企画には、ツーリングライダー魂が大きく揺さぶられた思いがした。

 排気量が小さいバイクをけなす奴なんざ、己の度量も狭過ぎるんだよう!

 いつの日か原二のマシンで、のんびりと旅してみたい。そんなぼくの長年の夢がようやく叶ったツーリングだったと確信する。

 まさにその第一歩が今、ようやく始動したばかりだ。