ツワモノどもが夢の跡




常磐道いわき四倉PAにて



2008.11.21



『ちょっとバイクに乗ってくるよ』
「えっ、どこまで?」
『楢葉の天神岬まで』
「そんなに遠くまで。寒いわよ。クルマにしたら。もう冬と同じくらい寒いんじゃない」
『まだ、大丈夫だよ』
 家人にたしなめられたが、俺はゼファーのスロットルをあげた。陽は射しているが、雲の多い日和だ。

 まず、所用のため行きつけのバイクショップへ立ち寄る。
「キタノさん、年末年始にタイヤにピンを打って道東へキャンプツーリングしてきます」
 店員さんは、R1200GSで毎年、冬の北海道ツーリングを決行しているツワモノだ。
「今日は、どちらまでツーリングされるのですか?」
『ちょっと、楢葉までね』
「遠いですね。寒いですよ」
 いや、真冬に北海道ツーリングする人が何をおっしゃると噴き出しながら、ショップを後にした。

 東北道に乗ると底冷えのする寒さで、防寒グローブの中の指先が痛くなった。時折、冷たい雨がパラパラと体にあたる。郡山から磐越道へ突入。ちょっと気が遠くなるぐらいの寒さでとても辛かった。

 それでもいわきに入る頃になると気温が高くなる。気候がまったく違う。常磐道へアクセスし、いわき四倉でようやく小休止。バイクから降りると暖かいと感じるぐらい心地よかった。

 広野・楢葉ICで高速を降りると、あっという間に天神岬に到着。3週間前にオフキャンプしたばかりなのになぜか懐かしかった。

 まさに夢の跡という観あり。







 さすがにこの時期、フリーサイトで幕営しているキャンパーは皆無だった。この時点で14時をまわっている。高速をアクセスしながらやってきたのにやっぱり2時間半もかかる。

 目的のお風呂セットを回収し、山岳ルートで帰宅すべくR6を北上。昔の勤務先近くのラーメン屋で味噌ラーメンを食べて暖まろうという算段だったのだが、準備中。

 もう一軒、人気のラーメン店があるので、激辛もやしラーメンを食べにいこう。ところが、ここも準備中。15時少し前ぐらいなのだが遅かったか。

 人口のわりに飲食店が多い町なので、どうにか開いている店を発見し、味噌ラーメンをオーダー。この店に入ったのは実に7年ぶりである。店内は石油ストーブが焚かれており、とても助かっ。地元相馬味噌を使用しているラーメンもピリ辛でなかなか美味い。

 存分に暖まった。この勢いで阿武隈高原越えだ。しかし、どんどん冷え込んでくる。DASH村付近で、気温4℃。寒いという感覚を通り越して、なんだか意識が朦朧としてきた。とっぷりと陽が落ちたころ、ミニストップでホットコーヒーを飲んで暖をとる。

 17:30 ようやく拙宅に帰還。これが俺の今シーズン最後の遠乗りだと思う。

 お風呂セット回収のためだけに300キロ走り、6時間駆けた。着払いで送ってもらった方が絶対に楽だろう。

 でもまあ、背中で泣いている男のメロンということで俺はよしとした。

 というわけで、翌日は休日出勤!



FIN



記事 北野一機



 2010.8.22編集



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