北海道ツーリング2005後編




マオイオートランド







 京極温泉の近くには「京極スリー・ユー・パーク」というキャンプ場があった。果て?ここにキャンプ場ってあったかいな?意外に居心地がよさそうなんだが、この時間(15時ぐらい)で既にテントが激混みしていた。利用は次の機会にしよう。

 熱風を全身で受け止めながら、R276を走った。風呂上りで、この暑さ、かなり眠くなってくる。しかし、この別名「尻別国道」から見る山間の風景は久しぶりだ。広島峠の高速コーナーをクリアしながら、ふとそんなことを思ったりした。

 1億円のトイレで有名(悪名か?)な道の駅「フォレスト276大滝」ではなく、きのこ汁無料の看板につられ手前のドライブイン?へ入るが、無料のきのこ汁ってやってるのかい。そういう雰囲気はない。まあ、タダほど怖いものはないので、トイレだけ済まして出発する。

 しかし、本当にタダゴトじゃない暑さだ。もう夕暮れも近いのにまったく涼しくならなかった。暫く走ると美笛峠へ入る。相変わらず森の中の静かなルートだが、時より木陰に入るので、涼もとれ心地よかった。

 支笏湖畔へ突入。湖の蒼がよく映える。なんといっても透明度が16メートルを超え、日本第4位だ。道央では一番お気に入りの湖である。

 途中「支笏湖公園線」へ右折して千歳へ入る。名水ふれあい公園を通過。以前、ここの湧き水を訪ねたことがあったが、今回は時間が遅いのでパスだ。R36沿いにコインランドリーを発見したが、料金が600円とかで高過ぎる。それもそのはず、布団洗いとか業務用のランドリーだったのだ。ここの利用もパスだ。 
 近くに「チャーシュー工房」というラーメン屋があった。なんか美味しそうな予感がしたので、入ってみた。もちろんチャーシュー麺をオーダーする。

 出てきたチャーシュー麺のボリュームは凄かった。チャーシューはかなり煮込んだようでとても柔らかい(個人的には固めが好きなんだが)。スープも野菜と豚ガラのダシが効いて美味しかった。ただラーメンにコーンがのるのは好きではないけど。

 とにかくお腹一杯になった。
 がっちりとした年輩の店長が
「これから、どこでキャンプするの?」
 と話しかけてきた。
『実は、まだ決めかねているのですよ。どこか近くにないですかね』
 心中では早来町営「ときわキャンプ場」あたりを腹算用していたのだが。
「今時のキャンパーってあれじゃない。サイトに温泉とかついていて芝の綺麗なところがいいんじゃないの?」
 若い従業員が口を挟んできた。
『それはどこですか』
「長沼町です。確かマオイオートランドといったかな」
 実はこれが余計なお世話で後悔するモトになるのだが、このときは知るよしもない。
『そこにします。ありがとうございます』
 マシンに跨り、R337、通称道央国道を北上した。空にはでっかい夕焼けが浮かんでいた。

 道央自動車道の千歳東ICの真下を通過する。電光掲示板には「夕張方面大渋滞」と表示されていた。夕張で大渋滞?お盆の帰省かな?

 道が次第に狭くなってくる。そして畑や牧草地ばかりの光景だ。本当にそのマオイオートランドへ辿り着けるのかと思っているとキャンプ場発見。ところが「ハイジ牧場キャンプ場」となっていた。

 もうあたりが暗くなってきた頃、ようやくマオイオートランド到着。なんだガラガラだな。なんて喜んでいるとそっちはパークゴルフ場だった。

 道路を挟んで反対側にキャンプ場があった。しかし、もの凄い混み方だった。管理棟へ受付に行くと
「もうテントを張るスペースがあるかどうか」
 職員のおばさんが、走って場所を確認へ向かった。
「テント一張りぐらいなら大丈夫です」
 はあはあ息を切らしながら話していた。
「料金は1500円です」
 え?北海道で1500円も取るんですか。千円でも相当お高いと思うのだが。
「正確には500円分は近くの長沼温泉の入浴券なんですよ」
 なるほど長沼町もうまいことを考えたもんだ。キャンプ場利用者を全員温泉施設の客にするとは。まあ、これだけ設備の整ったキャンプ場で1000円なら致し方なし。

 日が暮れると気温がぐっと下がりだしてきた。それにしてもここのキャンプ場にはライダーがほとんど居ない。ファミキャンだらけ。

 単独での山行や孤独な野営を楽しむというより、ひとりで行楽地へ来て、ピクニックしている虚しさのみを感じていた。

 そこに旅がない。

 バイクも乗り入れ禁止だし、かなり鬱になる。俺には合わない今時のキャンプ場だ。多少古くても山賊の根城のようなキャンプ場が気を遣わなくていい。まあでも気を取り直してテントを立ててコインランドリー向かう。

 洗濯を済ませ、乾燥機にかけようとしたら、誰かが洗濯物を取り忘れている。煙草を吸いながら、かなり待つがやはり取りに来ない。
「放送してもらったらどうですか」
 見かねた学生風のにいちゃんが話しかけてきた。
『今夜は涼しいから、ここでビールを飲みながら待つよ』
 なんて言っていると警備員のおじさんが現れ、取り忘れの洗濯物をビニール袋に入れ、ドアに引っかけてくれた。なんとその洗濯物は翌朝までぶらさがっていた。

 テントへ戻り、ウイスキーをマグカップに注いで飲む。走り回る子供たちの喧騒のなか夜空を拝むと星がでていた。ミルキーウエイまでには至ってないが、微かに揺れ動く数個の大きな星がとても綺麗だ。うっとりするほど・・・

 今宵も次第にヨッパライダーとなり、いつの間にかシュラフに入って爆睡していた。




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