北のサムライがいく 東北ツーリング2017















本州最北端



 6時起床。朝シャワーを浴び身を清めた。そして荷物を整理してから朝食を喫した。宿を出発したのは8時過ぎ頃だ。雨はかろうじて降っていない曇天の空模様である。

 快調にR336を北上していく。三沢市の北部に達してくるとまさしく手つかずの原野が広がってくる。下北半島は筆者にとって未踏の地だが、この荒々しい光景を疾走していると勇壮無比な感覚になってきた。素晴らしい自然だ。

 上画像は、ラムサール条約に登録されている仏沼付近だ。小雨が降り出したので、フリーボックスからカッパを取り出して装着した。気温が低いのでカッパを着て丁度よいぐらいである。

 海岸沿いの快走路を六ヶ所村、東通村を順調なペースで通過していった。

 しかし、クロスカブ110の走破性は秀逸の一言に尽きる。乗り易さはもちろんだし、燃費は余裕のよっちゃんでリッター60キロ以上。エンジンの噴き上がりは絶好調だ。





 途中、県道4号でちょっと寄り道をする。ずいぶん昔から、一度は訪れてみたいと思っていた薬研温泉かっぱの湯に立ち寄ってみよう。

 結構、山深いところに『かっぱの湯』は存在した。人気はまったくない。駐車場にマシンを停めて、階段を降りた。するとかっぱさんがいる野趣溢れる露天風呂があるではないか。想像していた通りだ。

 身体を流してお風呂に入ると、アチー・・・・

 かなりお湯が熱い。暫く我慢して浸かっているとようやく身体が熱湯に馴染んできた。それでも15分くらいが限界だった。これ以上は逆上せてしまう。もう充分堪能したので、これにて上がろう。身体を拭いていると、アチー・・・今度は虻にお尻を刺された(TT)

 てっ、撤収!

 逃げるようにシーサイドラインへ戻った。尻が痛痒いぜよ。こんな光景が以前もツーリング中に遭った記憶がある。まさしく歴史は繰り返すか。





 雨はあがったが、肌寒いのでカッパを着ながら海岸沿いの道をひた走っていると霧の中にぼんやりと陸地が見える。あれは北の大地だ。筆者の頭の中からアドレナリンが次々と噴射されてきた。

 今年は東北ツーリングだけに留めようとは思っていたのだが、北の大地を肉眼で見てしまったら心が揺れ動いてしまう。大間のフェリーターミナルで函館行に空きがあったら、北海道ツーリングに切り替えてしまおうかしら。

 なんて考えながら本州最北端大間崎に到達。観光客やツーリングライダーがぱらぱらといる寂しい光景だ。これで快晴であればずいぶん趣が異なると思うのだがとむず痒いお尻をかきながら独りごちるなり。





 せっかく大間崎まで来たのだ。かもめ食堂で海鮮丼を食べよう。そこで、オーダーしたのが三色丼である。まずマグロは外せまい。あとはウニとイクラがいいだろう。ただ、ウニがこのところの悪天候続きの不漁で品薄と入口に張り紙があった。

 でも、ウエートレスの可愛らしいお姐さんが厨房に確認してくれたところOKとのこと。ただ、小食なもので三色丼MINIにする。流石に本マグロの刺身は脂がのって美味しい。

 グラスに入ったマグロの皮の酢味噌あえの歯応えもよかった。三色丼は、本来2300円なのだが、MINIにしたので1500円で済んだ。ご馳走様でした。





 なんだか肌寒い中、大間のフェリーターミナルへ行ってみた。あまり人気がないので、もしかしたらと期待してしまう。函館に行ったら、飲みに繰り出そう。久々にイカソーメンが食べたいなあ。

 しかし、そんな淡い期待はあっけなく打ち砕かれた。明日の最終便まで全便満席。トホホ・・・考えがアマゾン川であった。素直に東北ツーリングだけに徹しよう。寂しげにクロスカブのスロットルをあげる北のサムライの姿あり。

 津軽海峡沿いをひた走り、佐井村に入る。そして仏ヶ浦付近の道の険しさが凄い。狭い道幅をアップダウンと鋭いローリングの連続だ。少しも気が抜けなかった。腕や指に力が入り、なんか少し筋肉が麻痺してしまう。

 陸奥湾沿いのルートに入るとようやく穏やかな『むつはまなすライン』という道となる。少しほっとしていると、本格的に雨が降ってきた。カッパを着たままだったので、まったく動じることなくアクセルを握り続けた。

 むつ市の市街地に入った。ずっと雨に打たれ続けている。今宵もビジホ泊にしよう。しかし、それなりに賑やかな街並みなのだが、ビジホが見当たらない。もう17時過ぎで暗くなりかかっている。こんな状況で、宿がないなんて勘弁してもらいたい。

『すいません。このあたりにビジネスホテルなどありますでしょうか』
 たまたま歩道を歩いていたオバサンに訊いてみた。
「この道をまっすぐいくと2軒ほどあるので、まあお好みで決めてください」
『ご親切にありがとうございます。助かりました』
 というわけで、オバサンの言う通り直進し、ニューグリーンホテルに無事チェックインした。従業員さんの誘導で駐輪場へ行くとオートバイが10台ぐらい停車してあった。ツーリングライダーが悪天候でキャンプできずにどんどんビジホに流れてきているのだろう。

 詳しい金額は忘れたけど、宿泊代は5千円代だったと思う。その割にオートロック機能などが付いてなかなかのシングルルームであった。





 ホテルのランドリーで洗濯を済ませ、シャワーを浴びてさっぱりする。

 さて、今宵は街に繰り出すか。ホテルの方に地元で好評の『善』という飲み屋さんを紹介してもらう。雨の中、飲食店街を歩き、カウンターだけの小さなお店『善』を発見。

『すいません、ひとりなんですが大丈夫ですか』
「あいにく予約が入っているので、無理です」
 一度はマスターから断られたのだが、30代ぐらいの地元のご夫婦が席を詰めてくれてなんとか座れた。

 まずは生ビールでしょう。プハー、うめー。ガブガブと飲んだ。たまんねえなあ・・・





 どうやら串焼きのお店らしいので、盛り合わせをオーダーした。これが本当に美味しくてがんがん食べた。マスターが実に丁寧に焼いていたので旨いに決まっている。ビールも何度かお代わりし、結構ヨッパになってきた。

 いやあ、野営で苦しい思いをするより、ビジホ泊のなんと快適なことよなんて慢心している筆者の深層で、北のサムライの旅がこれでいいのかと叫んでいるような気もする。まあ、今宵は深く考えずに、マスター、ハイボールのお代わりちょうだい。ペロペロに酔って候。





 どうやらヨッパの無意識のうちに手作り餃子をオーダーしていたようだ。

 しかし、餃子の皮がパリパリで中の餡が旨味たっぷりのジューシーなお味がお見事だ。ぱくぱくと食べた。

 筆者がお店に入った時から、ずいぶん酔って大声で騒いていたご老体が、
「わいは今年で〇〇歳になったけどな」
 と叫んでいた。

 ちょっと、ジジイ、オジイサン、筆者よりも4歳も年下じゃないですか。その尋常じゃない老け方はなんだ?まるでカトちゃんペではないか。ショックだ。俺はあの老人よりも年長か。

 繊細なハートに大きなダメージを負った筆者は、一気に酔いが加速し、ふらふらと宿に戻って爆睡した気がする。

 というより、もうこのあたりの出来事はほとんど覚えてなかった。



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